最近エジプトに行って驚いたことがあります。それは、日本人ツーリストの多さです。
 私はエジプトではいつも、あまり日本人が入らない―正確に言うと団体客の来ない― ホテルに宿泊するのですが、今回はそこにもたくさんの日本人グループがいました。私の部屋のあったフロアにもたくさんの日本人がいました。廊下をペチャクチャしゃべりながら歩く日本人の中年女性。朝、レストランでグループになって食べているのも日本人です。似通ったスーツケースを廊下に並べて出すのも日本人です。カイロ博物館にもたくさんの日本人ツーリストがいました。
 日本人がエジプトに来ることは嬉しいのです。私が40年以上やってきた発掘調査を認めてくれているエジプト政府と国民に感謝していますし、そのお返しは日本人ツーリストを増やすことだと思っています。ですから空港でも飛行機の中でも街中でも遺跡でも、日本人を見ると嬉しくなり心の中でありがとうございますと言います。
 エジプトへ来る日本人は昨年1年で10万人を超えたそうです。ルクソールの乱射事件後2,3万人に減ってしまった時に比べると、3倍にも4倍にもなりました。エジプトに来る外国人ツーリストは年計で600万人を超しますから、総数に対する割合では1.6%と少ないのですが、日本人は目立ちます。私が日本人であるせいかもしれませんし、もっとも、同じような顔をしている中国人や韓国人を見てもそう思っているのかもしれませんが。
 エジプト人は日本人が好きです。というのも、日本人はおだやかで礼儀正しいからだといいます。また、とても気前がよく土産物など高いものでも喜んでどんどん買ってくれるからでしょう。ドライバーやガイドへのチップもけちりませんし、ペンなどもどんどんあげます。ツーリストの鏡です。だまされやすいとか人がいいからだと自嘲する人がいますが、私はそれで何が悪いのかと思うのです。日本人の場合、もともとお金の無い人はエジプトには来ませんし、ぼられたって高が知れているではありませんか。それより道端でツバをはいたり、ゴミを捨てる方がずっと悪いです。
 とはいうものの、私にとって日本人ツーリストは困りものでもあります。私を見つけると、握手をしろ、サインをしろ、そして写真を撮ってほしいと言うのです。もちろん減るわけでもないので断れないことが多いのですが、公共の場でのそうした騒ぎは格好悪いのです。その人たちが行ってしまった後、私はどんな顔で歩けばいいのですか。俳優でもタレントでもない私はとても恥ずかしい思いでその場を去るのです。ほとんどのエジプト人、外国人は私を知りません。なのにこの騒ぎは何なのだ、日本人って行儀が悪いなぁと思われるのです。
 時にはホテルのドアをノックしてまで写真を強要する人がいます。断りづらいのですが、これは断ります。写真を撮るということ自体はどうってことはないのですが、ブログやSNSで勝手に加工され、何と書かれるかわからないからです。陰からビデオを回す人もいます。とても嫌な気分です。そういった方は純粋にエジプト観光に来たはずですから、観光に集中してほしいと思います。気を散らさずエジプトを堪能してほしいのです。
 そして私に、「ここで何をしているんですか?」と聞くのだけはやめてほしいのです。エジプトは私の第二の故郷ですから、あなたよりずっと昔から来ているのです。

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アケトスタッフ

吉村作治のエジプトピアを運営する株式会社アケトのスタッフです。