尖閣問題を考える

10月4日ブリュッセルで行われていた、アジア欧州会合(ASEM)首脳会議の夕食後、菅直人首相と中国の温家宝首相が廊下の長椅子で会談を行った、というニュースが出ました。一見よい兆候と捉えた方がいますが、実は正反対で、このことにより、今回の事件が公式に尖閣諸島の領有権問題を国際化し、世界で考えてみようということになってしまったのです。いわゆる「やぶへび」となってしまったわけです。
中国にとってみれば「棚からぼたもち」であり、「来たか長さん待ってたほい」状態となってしまいました。陸上に例えるなら、元は日本の私道にいたパトカーに中国の商用車がぶつけたということで、国際的なポリスが存在すれば衝突事故として届け、あとはポリスに任せれば終わった話です。ところが、その事故よりも、事故が起きた場所が日本の私道ではないという理不尽な話にすりかわってしまったわけです。そこで日本が、国際世論に訴え中国の理不尽さを指摘しても、2国間のトラブルに手を出す国はいないわけです。愚かな日本外交と言わざるを得ません。
菅首相は、小沢氏のときもそうですが、直接当事者が会って話せば解決するという幻想をお持ちなのでしょう。全くずれています。直接本人同士が本心を語ればわかるのだったら、外交はいりません。国と国、人と人の間には利害があり、それがぶつかるわけですから、話し合ってうまくいく方が稀なんです。ですから、第三者を間に入れて、お互いの妥協点を探りあい見つけ出し、最後に両者が会い、手打ちとなるわけなのです。交渉術の初歩です。今回は、ともかく菅首相の会いたいという気持ちが前面に出てしまい、中国側に足元を見られ、中国の言うようにされてしまったのです。そして、尖閣の領有問題を国際化されてしまったのです。しかしそれに気付かず、会えたことに喜ぶノー天気ぶりにあきれてしまいます。
もともと今回の件は、失敗が続き過ぎました。9月7日に衝突事故が起きたとき、事情聴取をし、即座に国外追放とか国外退去とすべきだったでしょう。今までも何回もこうした処置をして、事を表沙汰にしなかったのです。国外追放とか退去の意味は大きいです。それを相手が受け入れれば、そこは自分たちにとって国外(日本領)と認めるわけです。そして、正式に外務省から在日中国大使館に、遺憾の意を表した書状を出せばよかったのです。
次に、船長の祖母が死んだという知らせがあったら、そこで祖国へ返すべきでしょう。中国はそういうことを大切にする国です。人道的にやるべきでした。ぶつけた経緯が映ったビデオを見せて、反省文のひとつも書いてもらえばいいのです。
そして3つ目に、9月10日に拘留延長請求が那覇地検から地裁に出されたとき、事情聴取が終わったので、中国大使の保証をとった上で返すのがよかったのです。大使は船長に面会しているのですから、大使の面子を立てればいいのです。
そして9月19日に、拘留10日延長(9月20日~29日)を決めるという愚かさを見せたのです。海の上とはいえ、交通事故でこんなに長く拘留できないはずです。いくら教条的に国境侵犯だと言っても、本人はそう思っていないし、これは国の外交の問題でしょう。地検や地裁の問題ではないはずです。マニフェストで主張している政治主導はどうなっているのです。外交は国の問題です。外交の素人に判断させるべきではないのです。
にもかかわらず、9月24日、何の理由もなく地検は、「わが国国民への影響や、今後の日中関係を考慮したよ」と言っていますが、これも越権行為。行政機関の地検が言うべきではない、国政に口を出しています。またもや政治主導はどうなったのですか。しかも、首相をはじめ外務大臣すらも「検察の独自の判断に任せた」という、自分たちの責任逃れととられるコメントをしているのですから、あきれます。こんな人たちに国政を任せていていいのでしょうか。答えはNO!です。一国の外交を、担当部局でない一地方の検察が判断するなんて、政権担当能力の放棄です。一部マスコミは、首相も外相も知っていたと言っていますが、本人たちが知らないと言っているのですから、そうなんでしょう。
そして、帰国した船長は英雄となります。その後、首相は直接中国との対話を求めるのです。おかしいのです。向こうが犯罪を犯したのですから、向こうからコンタクトしてこさせなければならないのです。土下座外交と屈服外交と言われても仕方ないです。悔しいです。第三者(例えば米国)に仲を取り持ってもらって、対等に事の収拾を計るべきです。しかも、隠密に中国に行った細野氏はマスコミに見つかり、表面的には何の成果も上げることがなかったのです。この間、中国にはやりたい放題の悪さをされました。しかし何の対抗手段も行えず、ただただ嵐の止むのを待っていただけ。無為無策の状態です。しかも、こんな重要な局面の在中国日本大使は、財界で実績があったといっても、外交では素人で外交官でないのですから、困ってしまいます。
外務省にはチャイナスクールというのがあると聞きます。どうしてすぐそこにタスクフォースを作り、隠密にやらなかったのでしょうか。やってもできなかったのでしょうか。もし、やる気がない、やれないならば、現在の外務省の職員は大幅に変えなければならないと思います。しかし、私は今の外務省の人はできると思います。政府の指示がうまくいっていないと思うのです。外務官僚にやる気を起こさせないのでしょう。
ただ、衝突のときのビデオを公開しなかったのはよかったと思います。何かひとつくらい切り札をもっていないと、これからの交渉ができにくくなるでしょうから。ともかく、日本領である尖閣という国益を守るために、これから外交をやってほしいのです。国民はマスコミにあおられて、交渉ごとの真相を知りたがりますが、裏事情を私たちに知らせることより、ともかく国益を守ってください。
今回の教訓として日本は、資源も原材料も、なおかつ生産、マーケットすべてのことを中国に依存することを改めていかないと、これからの日中関係は、何をやっても負けてしまうでしょう。「今回はいい勉強になりました」では済みませんよ、民主党。

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